フィンランドの英語教育が分かったというよりも、国の教科書を使い、デジタル教材を使って、オーソドックスに静かに先生と子供がやりとりしながら、流れる授業というのは、フィンランドやEUで初めてみた感じです。(教科書の写真の一部は、一つ前のブログに、掲載していますので見てください)
7年間の海外実習では様々な授業を見せていただきましたが、やはりそれはモデル校だったりCLIL先進校だったわけで、日本からやってきた私たちの勉強になるようにCLILの単元を合わせてくださったという可能性もあります。特に私たちが訪問したのは、大学附属学校でしたので、先生方は教科書以上の授業をいつも創意工夫されていたので、教科書仕様の授業をみせてもらうチャンスがあまりなかったのも不思議なことでした。
フィンランドでは英語は9歳開始で週2回です(3回のところも)教室は15人~20人。ここ2~3年は財政難で、増えつつあるそうです。先生は英語専科ですが、他の学校では、高学年では教科担任で分けているところもあります。いわゆるALTを見ることはまずありません。私のフォーカスは、1)教科書の構成がどうなっているか。2)Meaning Makingと文構造はどう関連させているか、3)言語教師と教科の教師の両面からみたCLILアセスメントについてです。授業を見せていただきながら、半構造化インタビューも可能な場合はさせていただきます。
私のアパートメントから徒歩圏の小中一貫校に何度か訪問させていただくことになりました。学校施設は素晴らしいもので、到着すると、校長でも副校長でもない、「校舎・設備のマネジャー」の方に会いました。フィンランドでは堅い訪問申請書は「なくてよい」という合理的なところがありますが、一応用意して挨拶しました。天窓から光を取り入れる校内の観葉ソラリウム、中庭を囲んで、カフェテリア越しに運動場が全て見わたせるような校舎デザインは、そのマネジャーがされています。
9歳から14歳までの英語教育(専科:Langauge Teacher)と、教科内容での英語指導(こちらはSubject TeacherやHomeroom Teacher)の両方の先生のご授業に参加させていただきます。まずこの日は9歳で9月に始めたばかりなので、Where are you from?や、国の名前について学んでいました。45分間、ペアワークを一回したほかはずっとデジタル教材を使っていました。先生の英語力はB1以上かと思いました。中学校の英語の先生はNativeと変わらない状況でした。それでも先生はNativeの音声を聞かせ、生徒に復唱させては、L1であるフィンランド語で「Mitaは What?」だね。「I am~は、と確かめながら話しています。生徒らは習いたてなので、I am from Finlandと言っているつもりでも、「I Finland」となってしまうので、先生は結構何度もリキャストして文字も見せています(フィンランド語はほぼ日本のローマ字読みなので、フォニックスは必要になるのですが、9歳ではやりません。たとえば My name---をなぞっていると、「naim」になってしまします。Where are you from?は、私も習いたてですが、Mista olet kotoisin? ミスタ オレト コトイシン?と言います。とにかく単語は全く違うのと文法も違いますが、語順は似ていると私は感じています。また、11歳ぐらいからぐいぐいと、読みも文字も文法もやるようです。テストは15歳(9 grade)まで一切ありません、ポートフォリオやセルフアセスメントなどはあり、リスニングテストなどはたまにするようです。一方でCLIL的な活動も並行してする学校がありますが、この学校はCLILにある一定の意見を持っておりしていません。そこのところが知りたくて訪問しております。中学校は来週なのでまだわかりません。
FBやブログに訪れてくださる方にはCLILのリポートをきっと楽しみにしてくださっているかと思います。それについては、ホームページのフィンランド海外教育実習に、授業記録も掲載していますので、そちらもご覧ください(年内には掲載許可OKの、今まで撮りためた中からフィンランドのCLIL授業かなと感じる3分ビデオを順にアップしますね)。
長く英語を教えている方はきっと感じておられると思いますが、CLILや劇、ストーリーといった、ホリスティックに学ぶ以外にも、地道な語彙や文構造の積み上げも必要ではないかと思っておられる方も多いと思います。わたしの今回の取材は、まさにそこにあります。教科書はほぼ使わず、先生方が創意工夫で魅力的な授業をしているイメージがあるフィンランドですが、そうではない日常指導に触れ、単語、語彙、フォニックス、発音、文理解、文法の指導はどう進めておられるか。特に9歳から12歳の児童には、中学校の指導法と同じで良いわけはありません。かといって、ずっと内容中心で文構造に注意を向けない方法では、慣れ親しみ(事例的な学習)から、気づいてパターンをつかっていく(カテゴリー学習)への深化は起こりにくいわけです。その段階の指導がフィンランドではもう長らく続けているのでそこを学ぼうと思っています。(つまり日本では、現状では、小学校にも中学校にも存在しない教え方)
この日お会いしたA先生は、30年以上の英語専科のベテランです。CLILは良いとは思うがこの段階では入れていないそうです。図工(Craft)の先生がやっているよ。とのことです。Nikula教授もよく言われていますが、日本では英語の先生がされることが多いと聞いているが、フィンランドは、担任や教科の先生のほうでのCLILの広まりの波が結構あるとのことです。A先生はとても静かに話します(フィンランドの先生はみなそうです)。
①まず、びっくりしましたが、起立して例をしたあと、手をのばしてリラックス、そして子供は思い思いの色んな形の椅子を選んで座りました。
②電子黒板でちょっとしたダイアログを聞かせ、やりとりをやってみせます。このダイアログには、音韻が必ずどこかに入っています。リズムがついていて、楽しく歌えますが、9歳にしてはやや大人っぽい音楽をつけているところが、良いなと思いました(子供っぽくも大げさでもない)。一緒についてくるように言います。すぐには出来ないので、会話の場合は、Aが話しているときはそこが色が変わるとなっていて、結構繰り返します。
③次に、電子黒板には、ビンゴや、ルーレットゲームがあり単語を学び合う活動をしました。全て音声が出ます。
④わかってきたところで、Grammar Gadgetという時間が5分ぐらいあり、この日は I と Myをやっていました。いろいろな物を指して、my bag などと聞かせていました。文法にういては文構造がビジュアルにわかるようなレゴでの表示をしています。ここは、今までもタイルで教えているところを見ていたので、文構造はそうかなと、わたしも想定していたのですが、電子黒板上で教えているのは初めてみました。
文構造は疲れるので、このあと短い歌を歌いました。
⑤もう一度ダイアログにもどり、ペアワークをしました。ペアワークといっても、リレー式で、先生は一人一人の発話を全員ここで聞きました。
⑥今日習ったうち、IとMyを、選んで( )に入れる問題を三つだけやりました。
⑦最後に宿題にするワークブックの番号を言いました。
⑧起立して、手を伸ばしてさようなら。
ここまで読んでくださったかたは気づいたと思いますが、電子黒板が上手く作られていたら、誰でも安心してできる授業だと言えます。ストーリーテリングや、Meaning Makingはもう少あってもいいのになとは思いましたが。A先生にそのあとインタビューをさせていただきましたが、CLILの話にお呼びと、笑顔になって、「あれは、子供にはいいよ。だけど英語の先生には時間がかかりすぎる。僕は発音や意味の理解、英語そのものの先生だから、今すぐには無理だと思っている。あと少しで退職だから、大学院に入りなおして勉強してからやってみたい」と言われました。また1年生開始については、労が多くて実がないのではないかという考えをもっておられました。9歳だと、やり取りの後に、文構造に少しふれてもしっかり聞けているとのことです。
次に4年生に行きました。がらっと雰囲気がかわり英語にちょっと自信がでているのか、何か質問しようとします。まだ上手く言えないみたいですが、聞くほうは少し進んでいて、何より、世界が広がっているようです。先ほどの3年生と同じ授業方法です(なんというか、小学校版PPPと、小学校トピックシラバスみたいです)。しかし、子供らは英語が嫌いな感じでなく、1年間で進んでいる様子が良く分かりました。高学年になると、親と一緒にヨーロッパに旅をしたり、ぐんと、英語や他国の文化が近くのだと思いました。England Iceland などの単語を練習していました。I am from Japan.を大変喜んでくれました。全体には、聞く>字で書いてあるのをたよりに2往復ぐらいのやりとり>少し言う (無理にいっぱい発話させない)。書くのは、選んで書くのが5か所程度。先生はそれが合っているかチェックはしない。この4年生には、うちの院生たちが毎年させてもらっている訪問CLIL授業はすごく頑張るだろうなという、手ごたえはありました。しかしCLILの授業で考えて何かをやり遂げる楽しいので、このように普段の授業も頑張るのか、その逆なのか、その組み合わせは・・と、色々考えました。今まで、所謂、日常からCLIL的に授業をされている先生からたくさん学んできましたが、日本でも、だれもが取り組めて、検定教科書の活用と併せてできるような、考えを深める思考のある指導はどうあると良いか、考えていきたいと思います。デジタル教材はとくに、使い手の視点で深いつくり込みが大事だと思いました。
また、フィンランド語を、今ゼロから学んでいますが、全く意味のわからない、チャンクを10回聞いてもやはり分からないんですよね。(例、Missa posti on? 郵便局はどこですか?とフィンランド語の先生が丸ごと覚えなさいというのですが、私は実は丸覚えがすごく苦痛でした。Postiは推測が効くのでいいですが、これが、違う単語だともう、何がなんだか分かりません。私はこの小学校に行って、A先生が、子供にダイアログになれさせた後に、「Where は何だと思う?そう、フィンランド語で Missa だね。」と教えているのを聞いて、「is は onなんだ。よく気づいたね」と母語も入れて話しました。こっちのほうがすとんと分かりました。Missa と on の真ん中に、場所を入れれば良いのか~なるほど=スキーマ化)チャンクであっても、ただ、そこに引っ掛かりが出るようなTalkを聞いたり、違う場面で同じ言い方を聞いたりすると、あ~っとわかる。そういうところが、日本の英語教育が3年生開始になった場合、高学年ぐらいで、子供らにすとんとわかるようにしていくというのは、指導法としても未確立なわけで、現状では、小学校でも中学校でもここをする人は、少ないと思います。やらねばならないことは、山積みだと思った次第です。A先生がちょいちょい、引き出す分の仕組みの Tipsみたいなものを、9歳の子は良く聞いていました。10歳はもっと聞いていました。)
次回は5・6年生です。その次が中学校です。4年生の全教科も見せていただきます。
職員室というには、あまりにも素敵なソファや、リクライニングシートがおかれた、Teacher Roomでコーヒータイムに参加させていただきました。とても気さくな方ばかりで、今度私の授業においでよ・・・と誘ってもらったので、何やら急に予定が埋まってきました。有難いです。小中で900人の生徒に、100人の先生がおられます。