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国際バカロレア(理数)

国際バカロレアの3日間にわたるワークショップとプレゼンの中で、「注目」を集めていたセクションは特徴的でした。それは、1)理数の統合、2)ニュースの信憑性を見抜きグローバルシチズンとして行動すること、3)ICTの徹底活用 です。そのうち、ScienceとMathematicsというキーワードが入ると、参加者が溢れるという状況でした。ただ、研究発表では、何をどう教えたのかを明確に伝える発表は少なく、(指導している教科の先生がバカロレアに参加できていない傾向は有りました)、やや理論寄りで終わったのは残念でした。また、小学校では「数学苦手を克服する」というプログラムがいくつもあり、日本とは異なり、数学の苦手感は日本より大変な様子が分かります。「英語をもちいて」ということを引き算すると、日本で行わているスーパーサイエンス・プログラムは内容的に優れており、今夏の東京学芸附属で開催されたIBプログラムも開始したばかりでも、数学は良く練られていました。この点は自信を持つと良いとは思いました。ただし、その良さを日本以外にも発信出来ているかとうと、否であろうと思います。この学会にも日本の発表はゼロであり、日本人参加者もゼロです。来年はアブダビで大会が開かれますが、全体としては、急加速で進んでいます。さて数学のIBプログラムで扱う内容の例です。

1)下の図が、指導モデルのプロセスです。

2)問題文です

「ルーシーは彼女の仕事で使うために、輸送会社について研究しています。彼女は毎週、200から300キログラムの荷物を発送します。Ted輸送は、1キログラムに15.99€のチャージを課し、またフラット料金を追加します。ルーシーの友達は、Ted輸送を使ったのですが、170キログラムを配送するのに、約2800€を支払いました。」

これが問題です。

1)実際の世界の問題をなげかけなさい(あなたはどういう質問をしますか?ここで)

2)モデルを発展させなさい

  ①この状況では何が従属関係で、何が従属関係でないか

  ②なぜ、一般線形モデルがこの状況に適切なのかを説明しなさい

   (この場合は、右上がりの正比例グラフで切片がY軸を横切るものが頭に浮かぶ)

  ③あなたの一般線形モデルにあった方程式を見つ合理的かつ実際的な、関連領域は何になりますか。

3)このモデルをためしなさい

  次の週、ルーシーは最初の荷物発送310キログラムし5031.90ドル払います。これはあなたの

  つくったモデルにそっていますか。もし、ちがっていたら、もう一度やりなさい。どのような修正を選

  んだか理由もあげなさい。

4)あなたのモデルを応用しなさい

  次の週、ルーシーは配送に4500ドルを予算見積します。そうすると最大で何キログラム配送できます

  か。キログラムの近似値で。

5)あなたのモデルを省察しなさい

  C(0)とはなんですか。コンテクストの中での意味は何で、その問題はなにか。

  ルーシーが週単位でかかる配送コストを予想するためにもしモデルを使うと、合理的かつ実際的な関連

  領域何になりますか。

 

この問題を英語で見たときは、難しそうに見えるのですが、実際には文系のわたしにも何を問うているか想像はつきます。理数系の学生なら、もし英語が苦手でもキーワードの数学表現さえ慣れていれば、数式はすぐに出来るのではないでしょうか。しかし、今までの数学だと、3)の数字をあてはめて、傾きを求めて、終わり、4)は代入して、最大をもとめればよい。ここで問われているのは、数字の操作というよりも、実際の配送の見積をたてる方程式を自分で求めること、それを応用した場合、どの程度の幅が出るのかとうことを、「数学の言葉」で実際の社会に適応することを視野に記述するということになる。

これを見ていると、PISAやバカロレアで数学を解くことは、日本の学生にとってそれほど難しいものではないのかという感じがする。ただ、IBプログラムでは、この解答を出すために、生徒らが様々な解法をセルフで図にかいたりシュミレーションしたりする学びをしてきているので、数の上でわかっているという状況での指導をするのではなく、メカニズムを説明できそれを実際に運用するということが求められるため教室の出の学び方も後者を意図した方法が編み出されている。3)のような学びは、修正がでたときに、相手に理由を説明して、修正をえらんだ理由も説得していくという力が求められている。

これは荷物配送会社の話であるが、このような現象を、理科の実験と結ぶと、意味のある方程式や放物線などを解くことにもなるだろう。